2月16日(土)   東京では寒くて強い北風が吹き、みんなが耐えているようです。

午前中の新幹線で東京へ。午後、日本プレスセンターで開催された「『都市問題』公開講座」に参加するためです。「老朽化する社会資本…再生の基本戦略」をテーマとするこの公開講座は、後藤・安田記念東京都市研究所が主催するもの。第一部では、中村英夫・東京都市大学学長(写真右)が「インフラストラクチャーの老朽化」と題して基調講演。第二部のパネルディスカッションは、新藤宗幸さん(同研究所常務理事・元千葉大学教授)が進行役を務め、パネラーは、手塚文雄さん(横浜市技監)、室崎千重さん(奈良女子大学講師)、竹村公太郎さん(リバーフロント研究所代表理事・元国土交通省河川局長)、保母武彦さん(島根大学名誉教授)。

●インフラ老朽化問題は、ベトナム戦争で疲弊したアメリカで顕在化
中村学長の講演は、1981年に出版された「荒廃するアメリカ」を紹介。米国におけるインフラ老朽化が、ベトナム戦争に国費を注ぎ込んだことで公共財産の維持管理がなおざりされて発生したこと。それらの公共財は1920〜30年代に建設されたものであるが、30年遅れの1950〜60年代に建設が進んだ日本に同じ現象が現れていることなどを指摘されました。また、対象となる社会資本の多くは市町村の管轄下にあるが、十分な維持管理体制が備わっておらず、東京ガスなど民間の手法を参考にすべきだという提言も興味深いものでした。

●取り組み進む横浜市。時代が変わったインフラ整備と改修財源の問題
パネルディスカッションでは、手塚さんが横浜市の取り組み状況を報告。室崎さんは高齢化が進む団地での住民の自主活動、また空き部屋を利用した行政の試みなどを紹介されました。中村さんは、元建設官僚の経歴から、「先輩たちの業績の否定はしづらい」と語りながら、若い技術者が「先輩がやったことを変える」という生きがいを持ってほしいと提言。保母さんは、社会資本更新のための財源問題を語り、長野県の栄村や塩尻市の事例に学ぶ課題を提示されました。

●あらためて知った…後藤新平の業績、またダム運用で原発6基分発電の可能性
ひときわ印象に残ったのは、竹村公太郎さんが語った2つのエピソード。そのひとつは、1920年(大正9年)に東京市長だった後藤新平が水道水の塩素滅菌を始めたこと。それ以前の水道事業は原水を供給するもので、給水人口が伸びても平均寿命は下がっていた。ところが大正9年を境に平均寿命が伸び、乳幼児の死亡率が下がり始めたそうです。後藤新平はもともと細菌学者で、ロシア革命時のシベリア出兵に外務大臣として同行し、軍事用途の塩素を持ち帰ったものを転用したとのこと。もうひとつの話は、人口減少によってダム機能に余剰が生まれていることに着目し、それを利用すれば原発6基分の発電ができるという話。「島陶也」という作家名を持つ人らしい話題提供です。

ところで、今日のシンポジウムの参加者は、地方議員が多かったそうです。3月の定例会を前にして勉強に来られたのでしょうか。先日、高知市でのシンポで挨拶を交わした岐阜市議・和田直也さんとも予期しない再開です。