長谷川俊英14年の市会議員活動  (9ページ)
まるで「人権感覚」を疑わせる数々の“事件”も取り上げる。
堺市内の主要駅には、「人権擁護都市」(1980年の議会決議)であることを示す広告塔が立っています。ところが市の行政執行にあたっては、先に書いた学校での体罰や丸刈り強制の他にも、およそ人権感覚を疑わせる事件がいくつも起こっており、議会で議論した主なものを記します。なお、ご紹介した事件以外にも、既卒者を除外した職員採用が地公法に触れること(1984.6)や、教員処分をめぐる違法性(1984.11)などを取り上げて議論し、改善や取り消しに至りました。
◆「あの家、生活保護世帯ですか?」…NHKからの照会に回答
NHKの放送受信料の支払いが免除されている生活保護世帯について、保護打ち切りなどで免除理由がなくなっていないかどうか、NHKの求めに応じて福祉事務所が回答していた。堺市では個人情報保護条例は未制定だが、個人情報の外部提供は電算機運営条例で原則禁止としている。市側の言い訳は、「NHKへの回答は台帳から手作業で調べているから問題はない」という理屈だった。まさしく「詭弁」であることは、誰だってお気づきであろう。電算機運営条例に、なぜ個人情報の外部提供禁止条項が盛り込まれたのか、その意義すら堺市職員は理解していない。これでは「人権擁護都市」の看板も泣く。市当局は、「条例の趣旨に照らして問題がないか検討する」と約束し、その後は当事者の了解を得て行う方法に変更した。 (1989.3)
◆回収時期を間違え、封筒も勝手に開封…国勢調査調査をめぐるミスの数々
国勢調査でプライバシーが漏れている事実がしばしば指摘された。市民団体などからの批判を受けて、国は調査票を密封して提出することを認めるようになった。ところが、堺市の調査員がその封筒を勝手に開けたり、「留守の家が多い」ことを理由にして、指定された回収時期を無視して集めていたことが判明した。調査員の適格者への委嘱や、その任務の徹底を欠いたことが原因で、市当局の仕事ぶりを厳しく批判せざるをえなかった。 (1990.10)
◆府の通達に違反して、金融機関に大量の住民票を発行
◆プライバシー侵害の恐れもある選挙人名簿の大量コピーにも無防備
1986年1月のマル優制度改定に伴い、金融機関が本人に代わって、確認書類の一つになる住民票を大量請求するケースが相ついだ。しかし、「この事態が進めば、金融機関に住民の情報が管理されてしまう恐れがある」として、大阪府が前年12月7日付で、「請求に応じなくてもよい」との通達を出していた。少なくともこの通達があった日以後、府内の自治体は大量請求に一切応じていない。ところが堺市だけは、通達後も堺市農協など4金融機関に3,662通もの住民票を発行。通達前と合わせれば、その数は6,486通にも及んだ。
このことを議会で追及したら、市の幹部が、市民のプライバシー保護の立場から配慮が足りなかったことを陳謝した上で、「今後は一切応じない」と答えた。当たり前のことが、どうして言われる前にできないのだろう。 (1986.3)
住民票事件の半年後、今度は選挙人名簿の大量コピー事件が発生した。もともと選挙人名簿は閲覧が自由で、複写機を持ち込めばコピーも認められていた。ところが、参院選比例代表区候補の議員秘書が近隣府県でコピーした選挙人名簿が広告代理店などに大量に流れ、プライバシー侵害事件になるのではないかと問題になっていた。調べると、コピーを拒否した自治体もあった。堺市にやって来たのもこの秘書本人で、選管としては注意深い対応が必要だったはずだが、それが欠けていた。 (1986.6)
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