橋下知事は、大阪維新の会の議員をして、定数削減や報酬の大幅減額などこれら議員が旧会派に属していた頃には正反対の主張をしていたことをいわしめている。また、そのことによって各議会に衝撃的な対応を迫っていることは事実であろう。ただ、その目的が、自己の勢力拡大にあるとすれば、長と議会とのチェック・アンド・バランスによって維持されている地方自治の仕組みを崩壊させかねない。とはいえ、橋下知事や河村市長の主張が市民の大きな支持を得るのは、議会の自己改革がそれほど遅れているからだということを、議会関係者はあらためて自覚すべきである。
先駆的な改革を進めているさきの三重県議会においては、「議会改革諮問会議」を置いて、みずからの改革の検証を第三者の手に委ねている。その委員を務める相川康子さん(NPO政策研究所専務理事)によると、諮問会議が行った県民意識調査で、同県議会の「議会基本条例の存在を知らない」と答えた人が73%にのぼったそうだ。県議会に県民の声が反映されているかどうかの設問では、否定的見解が過半数を占め、情報提供の充実、県民との意見交換、議会会議への県民参加などを求める声が全体の3分の2以上だったという。相川さんは、「ただ『見せる』だけでなく、県政の課題を分かりやすく『伝える』、さらには『ともに考える』という姿勢を見せてこそ、今日的な開かれた議会と言える」と指摘している(相川康子「民意を競い合う県政と議会に」『地域政策』37号)。
6 改革の“かなめ”は「住民参加」
堺市議会の議員として、私はこれまでも改革への試みを続けてきた。その内容は、本誌140号の「体験的・議会改革論」と題するリポートで紹介させていただいた。
同リポートには、米バークリー市議会が市民の発言機会を設けている「オープンマイクスピーカー」制度のことも書いた。その内容を、フリージャーナリストの浅野詠子さんが、2009年10月北海道の十勝町村議会議長会が主催する議員研修会で紹介したところ、参加していた議員たちが大きな関心を抱いたそうだ。そして、音更町議会がその制度を参考にした議会改革を実現することになったと、浅野さんから知らせていただいた。早速同町の議会事務局に問い合わせると、浅野さんの講演から2カ月後、12月の議会運営委員会で、バークリー市の事例を参考にして検討がはじまったとのこと。そして、今年3月定例会から、「議場でひとこと」という制度を創設し、傍聴者の発言を聴くことになった。
9月17日、私は3回目の「議場でひとこと」が実施される九月定例会を視察するため、帯広市の北に隣接する人口4万5000人のまち、音更町を訪ねた。
写真 音更町議会「議場でひとこと」
(音更町議会事務局提供)
←後ろ姿は、住民の質問に答える副議長
↓「議会言葉をわかりやすくして!」と発言する住民