「体験的・議会改革論」(その5)
都市政治研究所ニュース・レターbQ9(付録)
(3) 面白い議会で、傍聴を楽しんでもらいたい
地方自治法には「普通地方公共団体の議会の会議は、これを公開する」との規定がある。しかし、これは本会議のことで、委員会についての定めではないのだそうだ。
全国市議会議会議長会の『平成14年度・市議会の活動に関する実態調査結果』によれば、常任委員会の公開実績がない市議会が、697市中の228市、つまり33%も残っている。議会運営委員会にいたっては、694市中の451市(65%)が非公開のままである。
しかも問題は、委員会の公開制度の整備が遅れているだけではない。鳥取県の片山善博知事がいう「学芸会」評をもちだすまでもなく、せっかく議会を傍聴に来た市民の評判がかんばしくない。委員会や本会議での審議を面白くするには、まず議員自身の努力が必要だろう。
国会では、テレビ中継を意識するフリップを用意しての論戦もみられるが、傍聴者のみならず他の議員の理解も促すような工夫は、大いにあってよい。会議の場所に、パワーポイントやスライド映写機、OHPを用いての発言ができるような装置も必要だろう。ちなみに、堺市が建設中の新議場には、各議席にパソコン端末を設置し得るような配管も行ったそうだ。
傍聴席の環境を整えて、長時間座っていても快適に傍聴できるようにもしたい。この点、堺市議会の新議場の傍聴席には「親子室」(タイルカーペット敷き、約6u)を設け、多少はしゃぎまわる子どもを連れたままでも傍聴できるようなスペースを準備をしていることも、ご注目いただきたい。
また、傍聴者に議事進行の予定を示したり、議場でのやりとりが理解できるような資料も備えたい。希望者には、イヤホンなどを通じて、わかりにくい議事の進行状況を解説するような仕組みを備えることもできたら、もっと関心をもってもらえるのではないだろうか。
二元代表制でありながら、議院内閣制をとる国会を真似た議場をつくってきた日本の自治体議会も、あらためてその目的に応じた議場に変えるべきだ。
ぜひとも実現したいのは、議員同士が議論しあえるような座席配置。それも固定式でないほうがいい。まだ実際に見学してはいないが、北海道女満別町の議場のように市民ホールと共用するような試みに注目したい。地価の高い場所にある議場を、年に数日しか開かない本会議以外には使えないような設計はまちがっていないか。
写真 トロント市議会議場(左下部分=右写真に傍聴者用マイクがみえる)